朝まだきのこの時間にこの湖畔でバスを降りたのは、私だけだった。
静かな旅がしたかったので各州の子どもたちの夏休みが終わるのを待って9月を選んだのだが、それにしても静かすぎた。真空の中を歩いているような気分にさえなった。
周りを見渡しても人の姿はもちろんのこと、気配すら感じられなかった。
しばらく湖岸のベンチに座って青い静寂に身を委ねていると、どこからか一艘の小舟が湖面を滑るように現れた。
飛び跳ねる胸の鼓動を宥めながら、私は息を圧し殺してシャッターを押した。
ソロで旅したあの日から10年近くが過ぎたが、今でもこのクレンターラー湖の記憶の色彩は青いままだ。これから何十年が経っても多分、セピア色にはならないだろう。
感動の旅をありがとう。
(撮影:2014/09/17)